RUNだむ日記【Returns!】

RUNだむ日記は、2012年にサービス終了した北国tv.でのブログ。新作は、RUNだむ日記【+Plus!!】で。

今日の妄想ジョグ

私は走っていた。久しぶりのジョギングだ。

春になると擡げてくる鼻のアレルギーをきっかけに、この一週間、風邪をひいていた。仕事のほうは簡単に休むわけにいかないから、もちろん出社してちゃんと働いていた。熱こそ高くはならなかったが鼻水、喉の痛み、咳とひととおりの症状が続いた。だが、昨日まで残っていた咳が今朝はなくなった。天気は、季節の変わり目によくある、はっきりとしない空模様だが、やや明るい空は雨露を含んではいないように見えた。ランニングが趣味の私は、待ちかねたように午後から外に出たのだった。

私はマスクをつけて走っていた。それは走るのには邪魔な存在だが、せっかく回復した体調を、北国特有の春の粉塵で後戻りさせるわけにもいかない。一週間ぶりのジョグだし、病み上がりの体調を考えると、ゆっくり、ゆっくりと走るしかない。いきなり10Km以上の距離を走るつもりはなかったし、速く走るつもりもなかったので、自らの身体の声を聞きながらゆっくりと走っていたのだった。

春なのに午後になっても気温はさほど上がらない。むしろ立ち止まっていると筋肉が縮むくらい寒く感じる。しかし、2Kmほど走ると身体も温まってきた。不調なら5Kmで止めてもいいと考えながら走っていたが、なんとかもう少しは距離を伸ばせそうだった。

バス停に、黒っぽいキャップとウインドブレーカを着た年配の男性が立っていた。
彼の前を通りすぎたとき、突然「頑張って!」と声をかけられた。ふだんのジョギングなどでは、子供にそういうふうに声をかけられることがたまにあるが、大人からはほとんどない。

・・・はっ? 私を実業団の選手に間違えたのだろうか。マスクをして走っているのを、「仮想高地トレーニング」とか「有限酸素運動トレーニング」と思ったのかもしれない。マラソンファンの方だろうか。それとも、どこかの企業の長距離陸上競技部の監督・・・いや、総監督。あるいは部長・・・いいや、もしかすると終身名誉顧問か?

見る目がある人は、やはり目のつけ所が違うものだ。一見、どうしようもなく遅くて粘りのない、ランナーである私を見て、どこかに何か引きつけられるものがあったのだろうか。それとも、もともと私をスカウトしようと待ち伏せしていたのだろうか。だが、私はただの鼻炎アレルギー持ちで、仕事もそこそこ忙しいただの市民ランナーである。女房も子供もいる。この年で競技ランナーとしてはもう戦えない・・・。

もし彼が追いかけてきて、
「キミ、うちの部に来ないか!」と誘われたら、ちゃんと事情を説明して諦めてもらおう。残念だが、固くそう決心した。しかし・・・そういうことはなかった。
彼は意外と引っ込み思案なのかもしれない。

・・・・・・・。7Km走った。