RUNだむ日記【Returns!】

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06洞爺湖マラソン3 真昼の悪夢

せっかく楽しみにしていた洞爺湖マラソン。天候にも桜にも恵まれたというのに、僕の目の前の青空には暗雲が立ちこめはじめていた。
良かれと思って積極的に使用したスポンジの冷水が、ハーフタイツに挟んでいたタオルとマスクを濡らし、自分の腹を冷やし続けていたのだ。その結果はどうなるのか。長くは語るまい。辛くなる。

洞爺でkenjiさんがカメラを構えていたが、僕のほうが尋常の状態とはいえなかったので、気がつくのが遅れた。
なにしろ、大勢の混みあったランナーの中からゼッケンを頼りに見つけて瞬時にシャッターを切るのだ。こちらからアピールしなければ撮ってもらえない。だがkenjiさーんと手を振ったときは、少し遅かったようだ。後から送っていただいた写真は、後ろ姿だった。でも、後ろ姿の大会写真は、かつて一枚もないので珍しくとてもうれしかった。
ただ、その後ろ姿は、すでに哀愁が漂っていたのだった。

中間地点(21.1キロ)の通過タイムは、1'59"38である。
帰宅後に確認すると、GTMailSのゴール予測時間は、4'11"14だった。まあ、順当といえば順当な予測だ。
シーズン前に目標とした3時間50分は、今大会前にほぼ無理だなと思っていたが、これなら昨年の4時間18分の記録は更新できる可能性はまだあったのだ。後半も前半と同じ程度の走りができれば、の条件付きで。
だが、現実はそんなに甘いものではなかったのである。

20キロ以降はキロ6分台に落ち、まもなく24キロからはキロ7分台までラップが落ちていく。
なんでこんなに調子が悪いんだろう。ヒザに違和感はあるものの、キロ6分を切れないほどは痛くないはずなのに。
20キロ過ぎからは、ずっと不審に思いながら走っていた。

そして、そういえば少し前からお腹のあたりが冷えていることに気づいたのだった。やがてそれが痛みに変わるのは、時間の問題だった。しかし、その濡れたハンドタオルとマスクが腹痛の原因になりそうなことに気づいたものの、それを取り除くことは躊躇ってしまった。
その時はすでに、ハーフタイツも一緒にかなり湿っていたから、取ったほうがいいのか、取らないで我慢したほうがいいのか迷ってしまったのだ。
悩んでいるうちに、25キロ手前のトイレを通過した。取ったら取ったで、よりスースーしそうな気もする。取らなければ、それよりはスースーしない気がする。
結局、後者を選んでしまった。といって、どちらを選択しても結果は同じだったかもしれない。時はすでに遅かったのだ。

…そして悪夢は始まったのである。
気にしないようにしていたが、冷えが痛みに変わるのにはそんなに時間はかからなかった。
25キロ通過は、2'26"45だった。(昨年2'21"09)
先程のトイレに寄らなかったことを後悔し始めていた。気を紛らわそうと湖を眺めたり、まわりのランナーを見ていたが、痛みは少しずつ増してくる。次々と後続のランナーに抜かれていった。いや、自分がただ遅れていっただけのことに違いない。走りに腹筋を使えない。腕を振ると腹が捩れそうだ。筋トレした意味もないのか。使えないのなら。

なぜかラップは、ほぼ無意識にとっていた。
26キロからは、キロ7分後半からついに8分台に突入した。
痛みは周期的に襲ってきて、やがて引いていく。そしてまた新しい痛みを連れてやってくる。
27.5キロ地点にトイレがあった。でも混んでいた。痛みと痛みの周期の間だと我慢できてしまう。バカな僕は、そのトイレもパスしてしまった。だがそれは間違いだった。先日の「厚別競技場往復ラン」での事件を、ちっとも学習できていなかった。
ダメだと思ったら、そこにトイレがあるなら、迷わず入るべきなのだ。多少並んでも。

そういえば朝食は、昨夜買った冷たいサンドイッチと、家から持っていったどんぐりのデニッシュと、クーラーボックスに入れておいたバナナだった。飲物は冷えたスポーツドリンク。せめて温かいコーヒーにすれば良かったか…。

そういえば昨夜は、酔っぱらっていたので寝袋のジッパーを閉めずに寝てしまったっけ。しかも、せっかく持っていった毛布はかけ忘れていた。
早朝寒くて一度目が覚め、寝袋のジッパーだけは閉めたが、身体を冷やして体調に影響しただろうか…。

そういえばスポンジだけとって、給水しそこねたところがあったので、スポンジを絞って水を飲んだのだが、あれは飲み水じゃないよな…。

そういえばあれは、前のランナーが投げ捨てていったものをもう一度バケツで洗ってまた出すんだろうか。
いや、そんなことはないだろ…。いや、あるか… 。
気を紛らわそうと、いろいろ考えるのだがロクなことしか思い浮かばない。バカな自分を呪いながら走るのだった。

そして、やっと30キロ地点のトイレが見えてきた。
今度は迷わずまっすぐ立ち寄った。
すると3つあった個室のうち、一番手前があいていた。
ところが和式だった。一瞬迷ったが、洋式が開くのを待つことにした。今の足の状況からすると、できれば洋式の方がありがたいと思ったのだ。どうせタイムがどうのといってるレベルではない。
後から来た方に、和式なら空いてますよお先にどうぞ、と譲ったくらいだ。余裕なんかないのに。
が、数分待ち奥の個室があいたので入ると、なんとそこも和式ではないか。ガーン。なんだ、全部和式だったのか。
ショックだったが、もうそんなことも言ってられない。(中略…さすがに中での事件までは書けませぬ)
無事に、辛い思いと痛みと戸惑い(?)をキレイさっぱりと水に流し、元気よく(?)コースに復帰したのだった。

が、しかし………。このあとのラップは、さらに奈落の底に落ちていくのである。
(続く)